リプロダクティブヘルス・プラットフォーム「Youth Terrace(ユーステラス)」では、若者一人ひとりの多様なライフコースにおけるwell-beingの実現を目指し、全ての若者たちがリプロダクティブヘルスに関する正しい知識を得られ、困難を相談・解決できる社会システムの構築を推進しています。
こちらのページでは、2019年度より実施している包括的健康教育を受講してくださった方や「Youth Terrace(ユーステラス)」を実際に活用してくださった方、運営にたずさわってくださった方の声をインタビュー形式でお届けしてまいります。
第3回は、2021年度に包括的健康教育を受講し、またユースアンバサダーとしてユースカフェの運営にも関わってくださった京都大学大学院 医学研究科 人間健康科学系専攻 修士2年 吉田 早希氏です。
自分自身、妊娠・出産に対する知識や理解がないまま大学生になってしまったことが、課題だと感じています。私は、看護学や助産学を学ぶ中で、関連する知識を得ることができました。例えば「卵子は老化する」という事実を知ったことがきっかけで、自分のライフプランを考えるようになりました。身近な友人を見ると、バリバリ働いてキャリアと家庭を両立させたいと考えている人は、リプロダクティブヘルスへの関心も高いのですが、そういったことを考えたり、誰かと話したりする機会もないまま、何となく過ごしてしまう人も多いようです。今回の「包括的健康教育」のZoomセミナーを紹介すると、多くの人たちが参加してくれましたが、こうした機会がなければ、ほとんどの人たちは情報に触れることもなかったと思います。
「包括的健康教育」を受講して、「もっと早く受けたかったな」というのが、率直な感想です。自分自身が中学・高校で受けてきた性教育では、これほど踏み込んだ内容を聞くことはできませんでした。「包括的健康教育」では、こういう場面に遭遇した時、どうすればいいのかという行動までを具体的に教えてもらえたことが、すごく良かったですね。単なる知識だけでなく、こういう時は、こういう機関に相談すればいいのだということを知っていれば、いざという時に行動する一歩を踏み出しやすいと思うのです。現実的に、困っている人の行動を後押しするような講義内容だったと感じています。
大学生になると、初めて異性と付き合う人も多く、就職やその先の妊娠・出産も身近になりますので、リプロダクティブヘルスの知識に触れるのは大事なことです。全ての学生が平等に情報を得られるという点で、入学時のオリエンテーションに「包括的健康教育」を組み込むことができればいいですね。印象に残っているのは、匿名での参加や質問が、想像以上に多かったことです。デリケートな内容でもあるため、プライバシーに配慮できる匿名参加は良いことだと思いましたし、実際に携わってみて、誰を頼っていいのか分からずに困っている人が、こんなにたくさんいるのだという現実を知りました。
私は、「Youth Terrace」が期間限定で開催した大阪のユースカフェに、ユースアンバサダーとして参加しました。その経験を通して感じたことは、例えば月経時の症状など、「ちょっと変かなと思っていても、相談すべきことなのかどうか分からない」「気になっていても、足踏みしてしまう」という人が多いということです。そういった方々をご案内し、「参加してよかった」という声を聞くことができました。
皆さんの話を聞いていると、最初に相談するまでのハードルが高く、その原因は、知識不足から来ているのだと感じました。やはり、自分の状態が正常ではないと認識しなければ、相談する場所があっても、利用すべきとは考えません。まずは、自分のからだに関する正しい知識を身につけることが大事ですね。これは、実際に話してみないと分からないことでした。
より多くの大学生に「包括的健康教育」を受講してほしいと思いますが、単に紹介するだけでは、足踏みしてしまう人が多いような気がします。まずは、参加のハードルを下げるために、参加者にギフト券を進呈するといったインセンティブがあってもいいかもしれません。また、高校の保健室のようにふらっと立ち寄って相談できる場所があればいいなと思います。さらにオンラインでも相談できれば、多くの人が利用しやすいのではないでしょうか。
匿名で顔も出さずに話したいという人が多いため、オンラインでいつでも相談できるような仕組みがあれば、利用しやすくなると思います。また、認知度を高めるために、健康教育や性教育に取り組んでいる団体等と協力し、情報を発信していくことも有効と考えられます。若い人たちは、SNSの情報に触れることが多いため、そういったツールを活用して認知度を上げることで、ハードルは下がっていくような気がします。ユーチューバーとコラボして発信するのもいいかもしれません。
とくに若い人は、いきなり助産師さんと話すよりも、私たちのようなユースアンバサダーがいると、話しやすいようです。こうした段階を踏むことで、相談しやすくなると思います。
助産師といえば「お産に携わる人」というイメージですが、女性の一生をサポートする専門家だという認識が広まっていけば、多くの人たちにとって身近な存在になることでしょう。いずれは、女性だけでなく男性にとっても、近しい存在になっていけばいいと考えています。