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インタビュー第2回 専門家の話を直接聞くことで、正しい知識が実践につながる 上智大学 総合グローバル学部3年 北野 ソフィア 杏奈氏
2022.04.11

リプロダクティブヘルス・プラットフォーム「Youth Terrace(ユーステラス)」では、若者一人ひとりの多様なライフコースにおけるwell-beingの実現を目指し、全ての若者たちがリプロダクティブヘルスに関する正しい知識を得られ、困難を相談・解決できる社会システムの構築を推進しています。

こちらのページでは、2019年度より実施している包括的健康教育を受講してくださった方や「Youth Terrace(ユーステラス)」を実際に活用してくださった方、運営にたずさわってくださった方の声をインタビュー形式でお届けしてまいります。

第2回は、2019年度に包括的健康教育を受講してくださった上智大学 総合グローバル学部3年 北野ソフィア杏奈氏です。

1. 大学生を取り巻くリプロダクティブヘルスの現状と課題

一番の問題は、正しい情報に触れる機会が少ないこと

北野:まず、私たちがリプロダクティブヘルスに関して学ぶ機会といえば、中学・高校で、性に関する授業が1時間あったかどうかという人が多いようです。それでは、質の問題もさることながら、絶対的な量が足りないのではないでしょうか。正しい情報に触れる機会が少ないことが一番の問題であり、そのことによって多くの弊害が生じているように思います。

知識だけでなく、実践するためのサポートが必要

例えば、大学生になって友人と話していると、「パートナーに避妊具を使ってほしいと言ったら、嫌われてしまうのではないか」といった悩みを聞くことがあります。

今は、インターネットで検索すれば、何でも調べることができます。しかし、調べた情報を自分の生活に持ち込むのは、意外と難しいようです。理想的な対処法が示されていたとしても、それを実行するまでの道筋で「どうしよう」と思い悩んでしまうのでしょうね。ですから、今回のユースカフェのように、自分の心配ごとや不安な気持ちを身近に相談できる場があれば、正しい知識を実生活に持ち込むための一歩につながると思います。

今村(HGPI):今の若い人たちは情報収集能力が高いと思うのですが、その一方で、インターネットで調べた情報を実際の生活に落とし込めないのは、なぜだと思いますか。

北野:ウェブ上に書いてある文章を読んで「たしかに、そうだよな」とは思っても、親しみが湧かないというか。インターネットの情報には、具体的な実践例が少ないのかもしれません。私は以前、ある講演を聞いたことがあるのですが、その先生は、自分の恋愛の体験談を交えて話してくださったのですね。抽象的な話だと分かりにくいのですが、具体的な事例をストーリーとして聞くことで「なるほど。そうすればいいのか」と、自分の行動としてイメージすることができました。

経験がない人の視点も大切に

北野:東京大学大学院医学系研究科国際保健政策学教室とカロリンスカ研究所医学部臨床疫学部門の調査によると、1992年から2015年の間で、18 ~39歳の異性間性交渉未経験の割合は、女性では21.7%から24.6%、男性では20.0%から25.8%に増加しているとのことでした(日本成人における異性間性交渉未経験の割合の推移について:出生動向基本調査の分析, 1987 – 2015年)。つまり、18 ~39歳のおよそ4人に1人が性交渉未経験者ということになります。このように経験のない人が多いことを踏まえ、リプロダクティブヘルス教育では、経験がない人の視点も大切だと思います。「経験があって当たり前」という前提では、知識ベースの話しかできなくなってしまいます。

性の多様性への理解が追いついていない社会

最近、SOGIやLGBTQIA+などが知られるようになり、私の周りでも、同性の友人に告白されたとか、高校時代の同級生がSNS上でトランスジェンダーであることを公表したとか、性の多様性が少しずつ身近になってきました。その一方で、学校の性教育などは、基本的に男女間の性交渉を想定した内容が中心となっています。また、最近は改善しているのかもしれませんが、男性同性愛者とHIVを結び付けるような間違ったイメージや、HIVは薬物治療でコントロール可能になっているにもかかわらず、偏見が続いているように思います。こうした状況を考えると、日本社会における多様性の尊重はまだ表面的だと言わざるを得ません。性の多様性への理解が、現状に追いついていないと感じます。

2. 実際に受講された「包括的健康教育」について

専門家だから安心して受講できる

北野:これまで高校などで受けてきた性教育は、先生が教材をひたすら読むだけだったような気がします。しかし、今回の「包括的健康教育」は、普段からリプロダクティブヘルスに深くかかわっている助産師などの専門家が教えてくださるため、安心して講義を受けることができました。疑問が浮かんだら、聞きに行ってみようと思わせてくれるのが、この講義の良さですね。

大学は、全ての学生が「包括的健康教育」を受けられる環境整備を

今村(HGPI):アンケート結果では、受講者の約97%が「包括的健康教育」の講義は大学生にとって必要だと思うと回答しています。

北野:私も、「包括的健康教育」の講義は、全ての大学生に受けてほしいと感じました。多くの大学では、入学後のオリエンテーションなどで飲酒などの注意喚起をするのですが、飲酒に対する注意があるならば、「包括的健康教育」も行ってほしいですね。大学には、全ての学生が「包括的健康教育」を受けられる環境を整える責任があるように思います。

受講後の変化

受講したことをきっかけに、普段はなかなか口に出さない悩みなどを、友人と話すことができました。彼氏と具体的な話ができたという先輩もいます。

今村:受講後のアンケートでも、「避妊の必要性をパートナーと話し合うことができた」と回答してくれた人がいました。たった1コマの講義を受けて、話題に出すことができただけでも、大きな一歩だと思います。

3. リプロダクティブヘルス・プラットフォーム「Youth Terrace」への期待

ユースカフェで相談したいこと

「これ、病院に行くほどの悩みじゃないけれど…」ということは、誰にでもあると思います。そんな悩みを、ユースカフェで相談できればいいですね。病院ではない中間的な存在でありながら、専門家にきちんと対応してもらえるのが嬉しいところです。

私だったら何を相談したいかなと考えると、最近、なかなか自然妊娠に至らず、不妊治療を受ける人が増えているという話を聞きます。そこで、将来の不妊リスクを抑制するために、今のうちから気をつけられることがあれば、知りたいですね。他にも、なかなか人には聞けないけれど、気になっていることを相談して「これでいいんだ」ということが分かれば、安心です。

助産師に直接聞けるメリット

今村(HGPI):直接、助産師に話を聞くということについては、どのように感じていますか。

北野:私自身は、助産師さんに直接会って相談したいと思いますし、多くの人は同じ意見だと思います。中には、何らかの理由で、匿名のままインターネットで調べたほうがいいという人もいるかもしれません。しかし、インターネット上の膨大な情報を上手く取捨選択できているかどうか、自分で判断するのは難しいものです。その点、信頼できる専門家に相談できれば、会話をすることで印象にも残りますし、やはり安心ですね。

知識を「自分ごと化」できる環境

また、万が一の備えとして、もし性被害にあってしまったら、どのように行動すればいいのか。もし望まない妊娠をしてしまった場合、どういう選択肢があるのか。こういった情報も、事前に知っておきたいですね。こうした情報は、インターネット上でも見つけられるのかもしれませんが、やはり信頼できる人と直接話せるユースカフェなどを利用することで、知識を「自分ごと化」しやすくなると思います。

Youth Terrace」は、双方向でつながれる接点

助けたい人がいるのに、なかなか支援が行き届かないという状況は、リプロダクティブヘルスに限らず多くの分野であると思います。そんな中で、「Youth Terrace」を通じて双方向でつながる接点を持つことは、若い人たちの安心につながります。「ジャッジしている訳じゃないよ」ということも、伝わってほしいですね。

アクセスしやすい環境、広げるための連携

ユースカフェは、用事がなくても、興味本位でふらっと立ち寄れるオープンな雰囲気であってほしいですね。何か問題が起こってからではなく、普段から接点を持っておくことで、いざという時に頼りやすくなります。場所、時間、お金などの面で、多くの人が行きやすいといいのですが。また、大学によっては、性教育の改善に向けた活動を行っているサークルなどがありますので、そういった学生団体と連携することで、広がりやすいのではないでしょうか。

今村(HGPI):やはり若い人が発信する情報のほうが、同世代の人たちの目に留まりやすい傾向があるようです。そういった学生団体と連携することによって、より多くの大学生に参画してもらえるかもしれませんね。

大学生以外の若い人たちにも周知できる工夫を

大学生に限らず10代、20代の若い人たちが対象ということでは、高校を卒業して飲食業やサービス業など、さまざまな業種で働いている人たちにも届くよう「Youth Terrace」の存在を周知していく必要があると思います。そして、多くの人たちが「Youth Terrace」の包括的健康教育や相談サービスを活用できることを願っています。

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